更新日:07/11/03

第十七回 泰永書展

〜書と鑑賞〜レポート

 

タイトル

第十七回 泰永書展〜書と鑑賞〜

会期

時期:9月21日(木)〜24日()4日間

時間:10時〜19時(初日のみ12時〜)

会場

東京芸術劇場 展示室T

来場者数

計397名 21日:78名 22日:62名 23日:136名 24日:121名

展示内容

書作:27人 30点

配布数

作品集:100部

平成の巨人 野尻泰煌B5チラシVer3:47枚(無料)

宣伝用チラシ:280枚

作品釈文:61枚(無料)

対談「書と鑑賞」:64枚(無料)

泰永会入塾生募集ハガキ:18枚

書藝要説サンプル:2冊/過去泰永書展作品集25冊

業者等

(敬省略)

(順不同)

主宰:野尻泰煌

企画制作:泰永会事務局

額:(株)笠井 劫榮麓

軸:(株)三幸

作品集写真:野尻貢右/松里昌立(写真家)

宣材写真:松里昌立(写真家) [Web]

印刷物制作:也太奇-YATAIKI- [Web]

作品集印刷:サンライズパブリケーション(株)

[第十七回泰永書展]

「書と鑑賞」

 本年は一歩踏み込んで”書と鑑賞”というサブタイトルをつけた。書展をやっていると毎度必ず聞かれることがある。 「なんて読むのでしょうか」「どういう意味なのでしょうか」  これについて私は昔から思っていたことがある。読めることと、書かれた内容を理解することと、鑑賞することは遊離しているのではないか。勿論、ある種の造詣をたしなむという点においては別だが、それは先の話である。目を通す作品というのは鑑賞ありきである筈だ。それを疎かにして「読み」や「意味」などあろうはずがないのではないか。今回は泰煌氏との対談を通して一層核心を深めた。会場では対談の内容を要約したものを今年も配布した。機会があれば読んで頂きたい。

 「最多動員数」 台風13、そして14号におののきつつ、開催してみれば実に晴れ晴れとした泰永書展となった。天候と曜日は動員数に大きな影響を及ぼす。結果的には曇った木曜日を除き晴天に恵まれた。劇場広場では”ふくろ祭り”そして5Fギャラリーや大ホールでも充実したイベントがあり、一見さんも多かった。また何より、単に覗くだけのお客様だけではなく、じっくり鑑賞して頂けた印象がある。

 「多彩な書体」 泰煌氏の楷書作を筆頭に、氏会心の一作3×8尺(90×240cm)の隷書、様々な形態の隷書、行草、そしてカナ、と過去にない実に多彩な作品群となる。泰永会の何ものにも囚われない姿勢の集大成ともいえるだろう。来場者注目度で言えば、書関係者に最も支持された作品が3×8尺の隷書(野尻泰煌作)。隷書の概念を打ち破った一作である。何一つ同じものが無く、字が互いにせめぎ合い、ひしめき合いながらも全体として調和がとれた、まるで自然界を眺めたかのような会心の一作。一般の方に最も支持されたのは楷書大字(野尻泰煌作)。これは泰永書展における泰煌氏の連作だ。他の展示会では出されていない。平年は書関係者以外から注目を浴びることが少ない作品だったが、本年は最も強い印象を残したようだ。次いで、漢代に書かれた隷書、曹全碑(そうぜんぴ)の臨書 2×8×2作。細く伸びやかな線で、波うつような横画がとても印象的だ。古くから日本人にも愛され、特に女性からの支持が高い作品である。 「学生部の充実」 学生部は毎年ご来場頂いているお客様の楽しみの一つ。本年より一気に半切が増え会場に若い力を芽吹かせている。観念のない伸びやかな書風にそれぞれの作家性が垣間見えた。現代の日本は床の間がない家が多くなり、その点でも小品は人気だが、やはり力量を見るという点、鑑賞という点でも半切というのは最も書に適した大きさと言える。 「来年」は 泰煌氏の奥様の七回忌にあたる。特別展示ミニコーナーを設置し、1、2作の展示も予定している。晩年、金文を作品テーマにしておられたので金文を展示することになるだろう。 泰永会事務局長 松里鳳煌