更新日:04/10/19

第十四回 泰永書展

〜書と日本人〜レポート

 

タイトル

第十四回 泰永書展〜書と日本人〜

会期

平成15年10月26日(日曜)〜28日(火曜) 3日間

10:00〜19:00(初日は12:00から)

会場

東京芸術劇場 展示室T

来場者数

計284名 26日:135名 27日:79名 28日:70名

展示内容

書作:20人 22点

配布数

作品集:70部

平成の巨人 野尻泰煌B5チラシVer2:53枚(無料)

宣伝用チラシ:350枚

作品釈文:70枚(無料)

泰永会入塾生募集ハガキ:41枚

書藝要説サンプル:6冊/第十一回泰永書展作品集20冊/第十三回泰永書展作品集15冊

業者等

(敬省略)

(順不同)

主宰:野尻泰煌

企画制作:泰永会事務局

額:拓洋堂

軸:(株)三幸

作品集写真:野尻貢右

宣材写真:松里昌立(写真家) [Web]

印刷物制作:也太奇-YATAIKI- [Web]

作品集印刷:サンライズパブリケーション(株)

[第十四回泰永書展] 

「念願の写真展との同時開催」

 昨年末より私の頭にはある思いが回っていた。それは、写真展との同時開催だ。私は泰永会にとって事務局長という立場である。その場合公正でなくてはならない。師が私に常々言うのは「会は会員の為の存在であって主宰者の私物ではない。主宰者は脇に構え、前面に出ちゃいけないんだ」と。しかし私は「先生を前面に押し出すのは会の為になるんです」と、第十一回展より嫌がる師の写真を無理矢理チラシに配したり、略歴等を勝手に作っている。ただく先生を支援したいというのはかなり私個人の立場であり強い思いでもある。更に撮影者であるカメラマンのハル氏に対してはまた異なる立場がある。頭が固い私は全てにとって公正な立場でやれなければいけないと思いを巡らしていた。私はハル氏にそれとなくアプローチをかける。手ごたえは弱い。だが否定的でもない。そして春が来て、結論に達した。来場されるお客様を主としたとしても、何度も足を運ばずにすむし、書を知らしめる助けになる。各関係者にとってもそれが最大の利益に繋がる。そこで強引な作戦に出る。勝手に抽選会に出てしまったのだ。駄目ならそれまでのこと。同時開催というハンデのもと、会場を借りる数回の抽選過程で、かろうじて日・月・火という変則的な日程を得る。そうして今年の泰永展は産声を上げる。

 「年々上がる作品の質に賛辞の声」

 「うまいねー」これは師の言葉。小品を選ぶ時、しきりに声を漏らす。どれを最終的に残すか困っている様子。師が困ることはそんなにない。何度も同じ作品を見ては一つ一つ射るような真剣な眼差しで選ぶ。「こんなことを言うと手前味噌になりそうだけど、実際うちの会の生徒は年々かなり上達しているよ」と嬉しい声。「お世辞でもおためごかしでもなく本当に上手になった」満足そうな声だ。私も密かに嬉しいことの一つである。年々、目が釘付けになる。

 今回は写真展の兼ね合いもあり、今まで来られなかったお客さんも多数ご来場頂けた。映画監督や、デザイナー、出版社に、生きる伝説といわれた書道会の巨匠までも。御歳90歳にして一人で杖をつきながらのご来場だ。師と師の作品に会いにいらしたようだ。私は子供のような悪戯感覚で「師の作品はどうですか?」と聞いてみた。少しの沈黙の後「筆勢がいいね」と一言。一つ一つ丹念に作品を見ていただけた。私も先生に促され感想を聞くことが出来、本当に嬉しい。また、軸の作品「日好」を指差しては「この作品私一番好きだな」とか、「無為」を指し「何が書いてあるかわからないけど、凄くいいよね」と声が聞こえてきた。私の知人でも龍城氏の作品を指差し「俺はこれが一番しっくりくるね」と感想を頂いたことも。常連の方からは別な意見として「作品の展示数が減ったかな?」との声も。実際は増えたんですけどね(笑)。理由は簡単、私の作品が目一杯壁を使ってしまったので(草書横2幅)ガランして見えるのだろう。それだけ私の作品に吸引力が無いということですな(ヒー!)。また楷書2字の作品を見ては「どういう意味ですか?」と何人かにきかれた。どうやら「書淫」の「淫」に目が止まったらしい。今風に簡単にいうと「書のマニア」といったところか。書が好きで好きでしょうーがないそんな人を賛辞の意味も含めて言ったのだろう。今年は変則的な日程といい最終日の雨といい、ホールでのイベントが無い等、幾つかの悪条件にも関わらず昨年とほぼ同集客数があったというのは本当に喜ばしいこと。来年は一層中身の濃い作品を引っさげ会場に展示出来ればと今から思いをめぐらしています。

 最後になりましたが、ご来場頂いた皆様、設営や撤収にご協力頂いた皆様、本当にありがとうございました。来年は師のフランス芸術祭、ウィーン出展の兼ね合いもあり、11月以降になる可能性もありますが、是非ご来場下さいませ。